自然に囲まれた別荘地で過ごす時間は優しく流れていきます。普段、多くのスケジュールに追われて過ごす時間とは全く別の趣きを持っているように感じますね。別荘での一日と会社での一日。これらが同じ24時間であるとは、ちょっと思えないくらいです。
ところで、時間の流れというのはいつも同じなのでしょうか。時計の針が刻む規則的な周期こそが、時間の本質なのでしょうか。きっと、そんなことはないはずです。我々は、楽しい時間が早く過ぎ、退屈な時間が長く続くことを知っています。
実は時間の流れにはクロノス時間・カイロス時間という二種類の流れが存在します。時計を使って管理する時/分/秒といった時間は、クロノスのほうに属します。対して、人間の知覚によって体感する時の流れはカイロスに属します。クロノス時間は機械的なものですから伸びたり縮んだりしませんが、カイロス時間は主体となる人の気持ちひとつで揺れ動くものです。
(このクロノス・カイロスという単語自体はギリシア神話の神々の名前から取られており、クロノスは時刻の神、カイロスは好機の神です)
さて、我々の日常を支配しているのはどちらの時間でしょうか?
出社時刻から逆算して起床時刻が決まり、そこからまた逆算して就寝時刻が決定される。何時の電車に乗らないと予定通りにたどり着けない……。そう、我々はクロノス時間の中を生きているのです。いわば、時計に支配された生活を送っているわけです。
もちろん、それを否定するつもりはありません。誰も彼もが自分の感覚で時間を使っていたら、社会は成立しませんから。しかし、だからといって一年365日をずっと、時計の下で生かされるのが人間らしい生活なのかと考えた場合、それはそれで首を捻りたくもなってしまいます。
きっと、日常から乖離した別荘であれば、普段とは違った人間本位の時間を感じ取ることができるでしょう。そこでは、まだ子どもだった頃にはいつでも側にあった、あの懐かしい時間が流れているはずです。
あなたも、別荘に流れるカイロス時間――心で感じる時の流れに浸ってみませんか?