贅沢ではないバカンスと別荘

日本では「別荘を購入」というと金銭的にも時間的にも余裕がある一部の富裕層にしかできない贅沢ととらえられますが、フランスでは一般企業の会社員が貯金をして避暑地に別荘を購入することは、それほどの贅沢とはいえないのが実情のようです。

ある統計によるとフランスの首都・パリで暮らすフランス人の約6割が郊外に別荘を所有しているともいわれています。ヨーロッパ社会に根付いている「別荘文化」は日本ではとても考えられない、ヨーロッパにおけるこのような独特の習慣が根柢にあってこそ形成されてきたものともいえるでしょう。

モームが愛した「コート・ダジュール」

フランスでは、避暑地の土地価格も比較的安価ではありますが、さすがに富裕層しか手が出ない場所が、日本人にとってもあこがれの避暑地として有名な地中海に面するコート・ダジュールです。特にフェラ半島の「サンジャン・カップフェラ」にはなんと500軒以上もの豪華な別荘が建ち並ぶ光景は、まさにヨーロッパの楽園といってもよいほどです。

建物自体にもさまざまな趣があり、その見事な景観によってヨーロッパ諸国からの観光客も多く訪れる名所となっています。オリーブや椰子の木々に覆われ四季の花々が咲き誇るまるで絵画のような美しい景色の中に自然に溶け込んだ豪奢な建築様式別荘群はただ眺めるだけでも一見の価値があるといえるほどです。

著名人が所有する別荘も昔から多くあり、イギリスの大作家サマセット・モームは戦前の1926年からこの地に移り住み、戦後1965年にこのサンジャン・カップフェラにて91歳の生涯を終えています。

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