花開く芸術の都

そしてフランスには貴族階級の人々が芸術的才能を有する人物を招き、経済的援助を与えて育成するという国家的風潮が他国よりも強く存在していました。そして同時にフランスには「マリー・アントワネットの悲劇」で知られるフランス革命のように、市民が武器をとって王政を倒したという歴史もあったのです。

一般的に王政や貴族社会が市民革命によって瓦解すると、それまでの象徴として芸術作品や文化的建造物も破壊されることが世界の歴史ではよくみられますが、フランスに関しては政治・経済と芸術・文化を区別して考える市民意識が古くからあり、革命後は首都のパリが芸術の都としての機能をさらに高めっていった歴史は、世界史の上で特筆されるべき事実といえます。

フランスの風土が生んだ「バカンス」

日本にはないヨーロッパ諸国の代表的な習慣としてよく挙げられるのが「バカンス」です。日本語にはこの「バカンス」を意味する適当な訳語が存在せず、「バカンス」という外来語がそのまま定着してしまったことがヨーロッパ社会と日本社会の違いを象徴しているかのようです。「バカンス=Vacance」を無理して訳すると「長期休暇」という日本語になるのでしょうが、これでは「バカンス」という単語に含まれる心躍るような楽しい雰囲気が表現されていません。

日本では仕事で疲れた英気を養うために休暇をとるという意識がいまだに強く、休暇とは「仕事の次のステップのために体を休める」ものなのですが、ヨーロッパの人々にとって「仕事とはバカンスを楽しむためにするもの」という認識なのです。

そして、ヨーロッパ諸国の中でこの「バカンス」に対して国民の思い入れがもっとも強いのがフランス人だともいわれています。寒冷期が長いフランスにあって、短い夏場に比較的温暖な気候の土地で家族とともに数週間のバカンスを過ごすことは一年のうちで最も楽しい時期でもあります。なかには1ヵ月以上もバカンス休暇をとる人も多く、休暇のたびに別荘を借りるよりも、最も気に入った土地に別荘を建てる方が経済的とさえいえるのです。

贅沢ではないバカンスと別荘

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